2023年11月2日(木)に鹿児島工業高等専門学校(鹿児島県霧島市)にて、スタートアップ教育整備事業 インキュベーションプログラム『SPARK』の『大手サービスのMVP開発事例』と題してセミナーを開催しました。
本プログラムの実施経緯や目的・展望については1つの記事に記載いたしましたので、以下のリンクをご参照ください。
SPARKプログラム始動!
また、今回のイベントでは11月12日に開催されるMVP開発講座に先立ち、高専生にMVPや仮説検証のイメージをつけていただくことを目的としています。そこで、そもそもMVPとは何なのか、どのような目的で使われるかなどを実例ベースでゲストの方にお話しいただきました。
日時:2023年11月2日(木)16:45〜18:15
場所:鹿児島工業高等専門学校 情報工学科棟1F 合併教室
ゲスト:East Ventures フェロー 大柴 貴紀(おおしば たかのり)氏
参加人数:21名
「まず、ベンチャーキャピタル(以下:VC)とは、簡単に説明をすると、若い起業家のアイデアを聞き、良いと思ったら出資をするというお仕事です。
また、出資をするどうかの判断はPowerPointなどの資料で判断することが多く、モノ(MVP)がない時でも出資をしています。」と現在のお仕事について話されました。
そんな大柴さん自身の経歴としては、21歳のときに大学を中退しそこから人生を模索し様々なアルバイトをされ、webデザインを独学で学び、 HTMLやPhotoshop、CSSができるようになったとのことでした。
そして27歳からご友人の創った会社に誘われ、Webデザイナーとして働くようになったそうです。会社が大きくなり、デザイナーだけでなく徐々に経営サイドをやることになったとのことでした。
37歳になり、次のキャリアを考えた時に全く知らない業界で面白そうと感じたことから、VCをやってみようと今の会社への転職を決意されたようです。
現在参画されている会社、East Venturesは「創業直後」のスタートアップに特化して出資しており、約800社に出資したと出資先一覧を提示し説明されました。
続いて本題に入り、「なぜ、いきなり作り込まずに仮説検証をするMVPの開発が必要なのでしょうか。」という問いかけから始まりました。
その理由は『多くの起業家は失敗するから』で、その失敗のほとんどが「ニーズがない」ことが原因だそうです。
「絶対できる!売れる!といった自信を持つことは大事だが、一旦冷静になってこれは必要なのか世の中に問い、ニーズがあるのか作り込む前に検証する必要がある」
と話されました。
また、
「MVPは検証「だけ」できれば良く、一気にやりたいことを検証するとどれがニーズに刺さっているのか分かりづらいため、最大の価値になる機能だけ世の中に問うてみればいい」
と加えて説明されました。
そのためMVPはスピード重視。仮説をすばやく検証することが目的ですので、すでに存在するツールやプロダクト(Googleフォーム、LINE@、Wordpress、BASE、Shopifyなど)を活用する必要があるとのことでした。
続いて、MVP開発の大切さをスタートアップ3社の実例として紹介していただきました。
A社
アイデア:介護の悩みに関して誰に相談すればいいかわからないし、金銭面の不安が大きいのでは?
MVP:パーソナルな情報を記入してくれるのかを確認することを検証
使用したツール・プロダクト:Googleフォーム、LPはSTUDIO
B社
アイデア:インスタメディアから商品が売れるかも?
MVP:インスタで商品を紹介しリンク先の作成したECサイト売れるか
使用したツール・プロダクト:Shopify
C社
アイデア:海外で短尺の料理動画が流行っているのを知り日本でも流行るのでは?
MVP:日本でも受け入れられるのかをFacebookで検証
使用したツール・プロダクト:Facebook
最初は全員お金も人もいないため、開発にお金をかけられず、かけたとしても無駄になることが多い。なのでニーズがあるかを検証し、限られたリソースで少しでもリスクの少ないスタートを切るほうが良く既製品を活用したり、最低限の開発ですむプロダクトで検証をしようと今までの説明を元にMVP開発の重要性について再度述べられました。また、検証したその先も大事だということで、『本当に必要な機能はなにか』を初めから徹底して考え抜かれている実例としてBASEのお話を紹介してくださいました。
メルカリ開発者である山田進太郎氏の「何かを足したら何かを引け」という言葉があります。その言葉を元にメルカリ社内では『本当に必要な機能はなにか』を整理し見極めることと解釈されていることを話されました。
大柴さん自身の経験より、エンジニアは次々に機能の追加を提案されるそうですが、それは必ずしもユーザーが求めているものとは限らず、全員はその機能を使いこなせない。前述した「しまむら理論」のような手法で獲得したお客様が、新たな機能を追加することで使いこなせなくなると意味がないため気をつけてほしいと話されました。
その『本当に必要な機能はなにか』を初めから徹底して考え抜かれている実例としてBASEのお話を紹介してくださいました。
また、そのあとは大柴氏が事前に用意してくださった余談や学生自身のアイデアについてフィードバックを頂いたり、学生からの質問に答えていただき終了しました。
実際の事例をお話していただいたことでより学生がイメージしやすく、MVP開発に対して前向きな意見が多数見られました。
大柴氏には今後も学生のアイデアについてメンタリングやフィードバックをしていただく予定です!
MVPの必要性を理解した学生は、次回MVP開発に挑みます!